【レポート】紙の深さを味わおう〜紙のアイデアグッズを作る文具メーカー「カミテリア」編

9月21日(土)午前中、新宿区の早稲田にある、TV番組で話題、文具女子博でも大人気、紙のアイデアグッズを作る文具メーカー『カミテリア(ペーパリー株式会社)』にて、東京山の上大学の授業が行われました。

今回の先生は、社長である吉澤さん。
会場は普段はケヤキ並木が美しい早稲田通り沿いの、会議や商談で使われているショールームでした。

吉澤さんは紙の手触りや見た目などを重視しており、「触感メモ」という触れたときの感触にこだわった商品や「むすびん」という神社のおみくじを参考にして開発した付箋などを販売しています。

今日の授業コンセプトは「紙の楽しさを知ってもらう」。“紙オタク”ともいえる吉澤さんが生徒のみんなを“紙沼”へ引きずり込みます!

※紙沼……~がおもしろくてたまらない!!となり病みつきになってしまうことを“沼にハマる”という。この場合は、紙がおもしろくてたまらない!!という意味。

奥が深い、紙のあれこれ

まず最初に手渡されたのは、白紙で作られた冊子。それぞれのページが違う素材に紙によってつくられています。

1ページ目は一般的な“上質紙”。なめらかでありつつ、少し指への引っ掛かりが残るスタンダードな紙。コンビニのコピー機などに使われています。次のページは“ユポ”と呼ばれる、先ほどより指の滑りが良く丈夫そうな紙。こちらは主に選挙用紙などに使われるそうです。3枚目は今までの2枚とは違い、人工的な白さを感じる見た目。“マシュマロCoC”という商品で,太陽のもとでもはっきりと書かれた文字を読み取ることができます。ほかにも銀行などで使われていた、透かしの入った筆記用紙、“バンクペーパー”。イギリスで書き心地の良さから大人気だった商品を日本企業が作成した、“OKフールス”が紹介されました。OKフールスの元商品であるフールス紙は、「シャーロックホームズシリーズ」に透かしの入った上質紙として登場するほど質のいい商品だそう。

体験させていただいた5枚の紙でも、触り心地・見た目・書き味に明確な違いがあり驚きでした。ふだん“紙”と一括りにしてしまっているけれど、改めてたくさんの種類が用途別に存在していることに気づかされます。

紙を破るのって、いつまでもできる気がしません??

書く、触る、見るのほかに、“破る”という行為も紙だからこそできることの1つ。カミテリアで販売されている「SHURITTO」というtodoカードは、紙を破った時の特徴的な感覚から商品名がつけられています。メモの欄が非常に薄い、裏が透けて見えてしまうほどのグラシン紙で作られており、予定を書いて終わったら破っていく、という商品。予定が終わったホッとする気持ちと、紙を破るスカッとした爽快感、そして障子紙を破ってしまったような小さな罪悪感は病みつきになってしまいそう。いくら破いても怒られないカードなのに、破った瞬間、背筋がヒヤッとしてしまうのは体に刻まれた記憶なのでしょうか……?(笑)

紙の音に耳を澄ませる

紙に書く際に出る音、というのも紙の魅力。紙の音だけのYouTubeコンテンツがあるほど人気分野なんです。ふだん聞き流してるけれど、気を付けて聞いてみると確かに落ち着く紙の音。書く音は、鉛筆であれば紙が黒鉛を削ることで、ボールペンであればボールが紙を転がることで発せられています。つまり紙が変われば自然と音も変わってくるということ。この事実に魅力を感じた吉澤さんが開発したものが「sara/sara」と「zara/zara」の2つのメモ帳。それぞれ、サラサラ・ザラザラの、少しづつ書き心地の違う紙で構成されています。また同じサイズで「siccocu/sumi(黒色系) yoiyami/ai(紺色系) sora/mizu(空色系) sakura/momo(桜色系) maccha/rikyu(深緑色系) kinaco/craft(茶色系) 」のカラフルなメモ帳も販売されています。

ほかにも子どもたちに大人気だった蝶のトレッシングペーパーや、月のクレーターを模した紙「かぐや」、左利き用にすぐ乾く紙、インクをはじかない金と銀のメモ帳、黒鉛を紙で巻いた鉛筆など様々な紙が紹介していただき、それらに触れて体験することができました。


なんと透かしで模様が描かれています。キレイ!!
凹凸でクレーターが表現されています。
断面が年輪のようになっている

まとめ

たくさんの紙の種類を教えていただけた今回の授業。一番印象に残ったのは、どれもきれいで使えない、という呟きに対する吉澤さんの言葉でした。

「もったいなくて使えない、はダメだよ。紙は使ってこその紙だからね。」

子供も大人も興味津々

見た目・触感・書き味・音。すべては書くため、印刷するために作られたもの。作り手は気持ちよく使ってもらうために心と技を込め、使い手は彼らの真心を受け取ってこそ”紙”という商品が完成する。希少価値や思い出、それぞれ価値観は違いますが、少なくともカミテリアで吉澤さんが販売している商品には、使ってほしいという願いが編み込まれていることが伝わってきました。

終わるころには机はすっかり散らかり、生徒の皆さんは大人・子ども関わらずもれなく“紙沼“にハマった様子。吉澤さんの紙知識にどっぷりと浸り、楽しむことのできた1時間半でした!

ライター『高橋昂希』
ロックとかわいいものが好きな大学生ライター。できないことは勢いでどうにかするO型の鏡。約束はちゃんと守ります。

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