【レポート】世界一周した旅する料理人から学ぶ・すぐ使えるスパイス講座
10月20日、我楽田工房ギャラリーで、東京山の上大学の授業が行われました。今回は自転車で世界を一周したカレー料理人、島田さんによるスパイスとカレーについての授業です。
島田さんは日本の企業に11年間勤めた後、一念発起して折り畳み自転車を相棒に世界一周を始めました。写真を撮るために自転車を担いで山に登ったり、富士山山頂ほどの標高のある平野を自転車を押して横断したり、と過酷で魅力あふれる旅だったそうです。
旅ではテーマを決めており、自身の好きなものである、太鼓・ギョーザ・カレーのレシピについて学びながら世界を巡ったとおっしゃっていました。
レシピを学んでいくうちに気づいたことは「意外とみんな教えてくれる」ということ。とくに、インドやスリランカではレシピを教えてほしい、と頼むと食堂のおばちゃんが呼んでくれることがあったそうです。島田さんの次に入ってきたお客さんの料理は、島田さんが教わりながら作っていた、なんてことも。
世界はカレーにあふれてる
今回の授業では世界中で学び、体感してきた経験から世界のカレーについてや、スパイスについての知識を教えていただきます。
授業は、ルーから作るかターメリックやこれアンダーなどを調合しててつくるか、という日本と世界のカレーの違いから始まり島田さんが感じた世界のカレーの特徴のお話へと続いていきました。
例えばインドという国はとても大きく、インドカレーといっても北インドと南インドで別物といっていいほどの違いがあるとのこと。北インドのカレーは、クリーミーでこってり味。生クリームやバターを用いて、ごった煮でまろやかに仕上げているそう。一方で南インドのカレーは毎日食べても飽きの来ないサッパリとしたスパイスの効いたカレー。ライスとよく合い、町の食堂ではお皿ではなく、バナナの葉っぱに載って提供されるんだとか。
他にも様々な地域のカレーが紹介されましたが、とくに印象的だったのは”マッサマンカレー”のお話。2011年にCNNgoによって〈世界で最も美味な料理ランキング50〉で一位に選出されたカレーです。「インドカレーをベースに多くの食材や各地の特徴をミックスしたことから、おもしろい味になっている。」と島田さん。スパイスはそれだけでも、重厚な歴史的背景を持っている食材。いわば膨大な歴史ともいえるスパイスを調合して作るカレーに、とてつもない時間の重さを感じました。
スパイスとは?
今回は「すぐに使えるスパイス講座」ということで、実際にスパイスを使ったカレーを作っていくことに。
島田さんによるとスパイスはあくまで香りづけ・風味付けのものであり、旨味が増すわけではないとのこと。スパイスの効果としては防腐効果や食欲増進、体調回復の効果が見込めるそうです。「カレーは身体が求めるから、おいしいと感じる」ともおっしゃっていました。
カレー作りの合間には質問にも答えていきます。
保存方法はどうすればいいか?
日光の当たらない場所でZIPロックに入れて保存するのがおすすめ。湿気もない場所が望ましい。常温でOK。
油にこだわりはある?
古い油だと熱したときに、好ましくない匂いが出てしまうので匂いのないごま油「白ゴマ油」を使っている。オリーブ油が好きな人ならオリーブ油でもいいし、バターチキンカレーを作りたい、とかならバターでも良い。
スパイスはどこで仕入れてる?
基本的に市販のS&Bで問題ない。ただし、クミンやコリアンダーなど大量に使うスパイスは小袋で買ってしまったほうがいい。島田さん自身はアメ横や蔵前で買っている。
などの質問がされていました。
「カレーはスパイスの調合によって味が変わります。インドなどでは家庭ごとに味が違うなど本当におもしろいんです。深い味のタネがわかると、とても嬉しいし終わりがない世界というのを実感できてすごく楽しい。」と島田さん。
天龍村の巨大ナスとお茶を使う
最後は、天龍村の巨大なナスを使った「ていざなすカレー」と「チキンカレー」を試食することに。なすはインドでは定番の食材。天龍村の”ていざなす”はとてつもなく大きく、25人分のカレーに使った本数はたったの3本だったというから驚きです。
試食後は、天龍村・中井侍地区特産品である茶葉を用いたチャイも提供され、天龍村野村の方も思わず「これが飲めただけで、東京に来た甲斐があった」と感想をもらしていました。
スパイスの知識と奥深さ、そして実際の使い方まで。たくさんのことを学ぶことのできた2時間でした。
ライター『高橋昂希』
ロックとかわいいものが好きな大学生ライター。できないことは勢いでどうにかするO型の鏡。約束はちゃんと守ります。