【レポート】負けるサッカーから学ぶ子育て~トラストユナイテッドFC流のジュニアサッカー~

1月18日(土)、トラストユナイテッドFCの代表である床井伸太郎コーチによる授業 「負けるサッカーから学ぶ子育て」~トラストユナイテッドFC流のジュニアサッカー~ が行われました。

当日は講師陣が見えなくなてしまうほどの超満員

今回は、東京山の上大学・共同代表の海田さんが企画した授業。海田さんの息子さんがトラストユナイテッドFCに通っており、コーチが積極的に指示や指導をしない点に疑問を持ったことが発端でした。コーチに話しをきいてみたところ、独自の考えを持っており、たくさんの人に知ってもらいたいことから、今回の授業となったのです。

自らを”コーチではない”とする、床井コーチ。指示をしないという指導にはどのような想いが隠されているのでしょうか……?

トラストユナイテッドFCとは??

トラストユナイテッドFCとは、東京都文京区のサッカーチーム。ジュニアサッカーといわれる小学生のサッカー界は、大人のサッカーとはルールが異なります。8人制であり、男子・女子は基本的に一緒にプレー、前半・後半の時間は、学年によってさまざまですが、大人より遥かに短く設定されています。チームにも種類があり、分類できるのは大きく3つ。

1つ目は”クラブチーム”。平日の放課後や土日・祝日に練習があり、専属のコーチが指導にあたります。2つ目は”少年団”。基本的に練習は土日・祝日。保護者や地域の方が指導しているケースが多いです。3つ目は、”スクール”。練習は平日の放課後、専属のコーチが指導につきますが、練習試合はありません。3つの中で、トラストユナイテッドFCはクラブチームにあたります。

しかしクラブチームのなかでも、トラストユナイテッドFCは特殊なチーム。海田さんが感じたように、ほとんど指示を出すことがないのです。試合中も、さらに練習中もほとんど声を上げることないといいます。

トラストユナイテッドFC 、5つのキーワード

トラストユナイテッドFC独自の方針には、5つのキーワードがあると床井コーチは語ります。

1つ目は「少年サッカーでは負けることも大切」サッカーの目的はあくまで、成長することだと語る床井コーチ。精一杯やって負けたときにこそ、人間的な成長があり、自らの行動を振り返って取り組み方に意識が向くのです。Jクラブのような競技者を育てるクラブとは違う楽しさ、それ以上に成長を経験してほしい。そのためには、どう負けるのかが大切です。床井コーチは、誤解を恐れずに言うなら学生サッカーは負けるためにある、と続けていました。

2つ目は「子供同士の中に学びがある」・3つ目は「子供が自立することを目指す」それぞれ、指示ををしない、ともつながってくるキーワード。過去にはサボってる、と指摘されたこともあったといいます。海田さん曰く、他チームと比べてとても際立つ指導姿勢。しかしその姿勢の裏には、子供たちが主体的に取り組んでほしい、という狙いがありました。自分たちが考え、取り組み、失敗し、また挑戦する、試合に臨む作戦も子供たちが考えています。声をかけることで、子供たちなりのトライ&エラーの機会を失わせてしまうかもしれない。そのため床井コーチの指導は、あまり声をかけない現在の形となったのです。

4つ目は「できるだけみんなに機会を与える」1つ目に関連して、試合に出て勝ち負けを経験することに意味がある、という考えから来ているものです。試合ではなるべく多くの選手が出場できるように気をつけており、実力が拮抗する試合になるよう工夫することもあるといいます。ぎりぎりの試合を経験してほしいため、ときには調子のいい選手でも交代してもらうことも。

自分はコーチではないと思っている、と語る床井コーチ。プロの指導者とは違い、自らの存在は子供たちの司会者なのだ、と語ります。試合に勝つための采配的に子供たちの成長はなく、あくまで行動するのは子供たち。そのため床井コーチは、自身を司会者と名乗っているのです。

授業は海田さんとのセッション形式で進んでいきました

5つ目は「夢中になることが大切」努力は夢中に勝てない、という言葉があるように、子供たち自身の、やりたい!サッカーをしたい!という意思は何よりも濃い成長を生みます。子供たちより長くサッカーをしていてるものとして、床井コーチが心がけているのは、子供たちが夢中になれる環境をつくること。練習メニューも子供たちが熱中できるよう、楽しく学べる仕組みを考えているそうです。

実力が拮抗した試合は一生懸命勝とうとするため、子供たちが熱中し、学びの多い試合になるといいます。白熱している試合には思わず親も熱中してしまう、と海田さん。そして、熱中してしまうのは親だけでなく指導する側も同じ。床井コーチは、自分が接しているというのもあるけれど、Jリーグの試合を見ているよりおもしろい、と笑っていました。

負けた経験は、やがて成長へ

指導をしていくなかで床井コーチ自身、学ぶことが多くあったといいます。

床井さんは指導者になる以前、プレーヤーであり、30代まではプロとして活動されていました。引退後、指導者として活動のなかで心がけるようになったのは、子供たちが自ら学べる環境をつくるということ。

近年、サッカーは人気のスポーツであり、非常に多くの子供がプレーしています。しかし競技人口は、年齢を重ねるごとに減少していき、大人になりプロとしてサッカーを続けられる選手は、ほんの一握り。そのうえで、プロになるだけが幸せではないと、床井コーチは語ります。

授業の最後には、参加者から質問に答える場面も

考える力、判断する力、思いやる力、問題を見つける力、チームで活動する力。それらを身に着けてことに意味がある。サッカーなどスポーツの本質は、普段の生活で活かせる能力を鍛えていくことなのです。このことを念頭において活動し、”いくら言葉で伝えたところで、子供たちが体験したことには敵わない””感じ取って、体得してもらわないと意味がない ”と考え、指導で声を上げることが減っていきました。

数ある体験のなかでも”負ける”は特に貴重な体験。負けて悔しいからこそ、多くの学びが生まれます。 せっかく数あるスポーツからサッカー、そしてトラストユナイテッドFCを選んでくれたなら、選んでくれただけの意味を持たせてあげたい、という床井コーチ。 ”負ける”などの経験させてあげることは、特に競技人口の多いジュニアサッカーの役割なのだ、と話していただきました。

プロの舞台でも活躍した床井コーチだからこそ、試合に勝つ、という枠に縛られない、人間的な成長の大切さを知っているのでしょう。これから、床井コーチたちによるトラストユナイテッドFCがどんな方法で成長の場を作り、子供たちはどんなことを学んでいくのか、とても楽しみです!!

ライター『高橋昂希』
ロックとかわいいものが好きな大学生ライター。できないことは勢いでどうにかするO型の鏡。約束はちゃんと守ります。

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