【レポート】当たり前のものが「ない」暮らしから学ぶ|東京山の上大学☓天龍村・特別授業

10月20日、天龍村役場の職員であり、都会からの移住者でもある内藤さんによる、天龍村の当たり前のものが「ない」暮らしから学ぶ特別授業が行われました。

トークは天龍村役場 地域振興課の内藤孝雄さん

高齢化率NO2の村での暮らし

都心から約5時間かけなければ着くことができない村である、天龍村。村の94%が山林であり、高齢化率が59.4%と全国2位となっています。長野県下でもっともはやく桜が開花する村でもあり、信州に春を告げる村という側面も。積雪することもあまり無いといいます。

内藤さんが移住関係の事業を始めたのには、天龍村を含め南信州の知名度が圧倒的に低いことがキッカケだったといいます。奥さんがたまたま地域おこし協力隊で天龍村に応募した、たまたま自分も田舎暮らしがしたかったと偶然の出会いではありましたが、天龍村をもっと良くしたいという想いから活動を始めました。現在では減っていく人口をカバーするために移住につながる相談会や、セミナーを開く活動をしています。

とても多くの方が参加されていました

人口が減ってしまったのには「村に特徴的な産業がない」という弱点があるためだと、内藤さんは説明します。

かつて栄えた林業やダムなどの産業も衰退し、将来の天龍村の人口は現在の予想だと80年後には240人となってしまうそう。大学や専門学校がないことや都市との賃金格差、出会いの場が少ないなどの環境も人口減少に拍車をかけているそうです。じっさい天龍村を離れる人は地元を離れたくないと感じている人が多いとのこと。「結びつきが強く、繋がりが強いからといってよそ者をシャットダウンする空気はなく温厚な人が多い」と内藤さん。

村での暮らしは駅に人がほとんどおらず、内藤さんの場合は徒歩で15分歩いて通勤していて、遠い場所への移動には軽トラックや軽バンが人気だとか。買い物はたまに行い、冷凍庫で保存。アマゾンやアスクルは然りと翌日に届きくので重宝しているそう。お風呂も薪で沸かしているというから驚きです。

天龍村あるあるでは、

  • 17時を過ぎたら「おやすみ」
  • 玄関に野菜がおいてある(誰かは野菜の種類で判断できる)

と微笑ましいものから 

  • 大きな災害はない(伊那谷が守ってくれる)
  • 起きたとしても備えがある
  • 行政が各家庭に無償で無線を配布している

 など天龍村の「ない」を実感させるものまで、様々なあるあるを紹介させていただきました。

内藤さん自身は、「週5日に仕事でリフレッシュや遊びは2日間」の買い物が日常に溶け込んだ都会生活と、「週5日に仕事で買い物や遊びに行くのが2日間」というリフレッシュが日常の溶け込んだ田舎暮らしを比較して、田舎暮らしを希望したそうです。

「地域と関わりを持つことは恋愛と同じ。移住とは結婚のようなものなので、まずは今回で天龍村のことを知ってくれたら嬉しい。」と内藤さん。

天龍村の魅力を伝えたい!『SHOCK部』体験レポート

その後は、東京山の上大学・食分野のゼミであるSHOCK部が紹介を引き継ぎました。 食で縁を繋ぎ、縁で人を繋ぐことをミッションにかかげ、食を通じて、人々の価値観をアップデートすることを目指しているSHOCK部 。以前、「ていざなす」が我楽田工房で行われた料理イベントで出されたことから「ていざなす」のもつ圧倒的な迫力に感動し、半月後には現地に赴き天龍村での暮らしを体感してきました。

彼らが紹介したいのは、なんといっても天龍村の特産品。「ていざなす」や「ゆず」を使った柚子胡椒、長野県では珍しい中井侍地区で栽培されている「お茶」など、魅力あふれる特産品を熱意たっぷりに伝えていました。

山の上大学の食ゼミ・SHOCK部

これからの天龍村を考える

授業は終盤に差し掛かり5グループで分かれて、天龍村の人々に自身の感じた疑問や思い浮かんだ企画を交換。ていざなすを使った商売の方法や、グリーンツーリズム・エコツーリズムを企画し観光産業の強化、クラウドファンディングを募り返礼品にていざなすを送る、など様々なアイデアが共有されました。

その後は先ほど紹介した、長野県内では唯一のお茶の生産を行っている天龍村・中井侍でとれたお茶の飲み比べを体験。最初の苦みと、あとからくる甘味、まろやかさに生徒の皆さんは驚きの声を上げていました。

天龍村のお茶 鮮やかな若葉色だ

最後は内藤さんから「恋愛と同じ。と言ったように今はマッチングするかしないかのお互いを知る段階。もっと知りたいや行きたいという相談があったら是非相談してほしい。」との言葉がかけられ、授業は幕を閉じました。

天龍村の「ある」とは何のか?という問いに対して、個人的には「自分で選び、考え、行動する」だと感じました。移住を選んだ内藤さん、玄関に野菜を置いていくれる近隣の方々、無線を配る行政、何か活動しようとはるばる東京までやってきた天龍村の人々。どこに所属している人も自身の住む土地をよりよく暮らすために、考え、選び、行動している印象を受けました。自らの力を駆使して生きていく、という実感。それが天龍村で感じることのできる「ある」なのかもしれません。

参加者の方それぞれ感じたことが違うであろう、今回の授業。参加された方々は、自分の感じた天龍村の「ある」を他の方と交換してもおもしろいかもしれません。

ライター『高橋昂希』
ロックとかわいいものが好きな大学生ライター。できないことは勢いでどうにかするO型の鏡。約束はちゃんと守ります。

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